響都超特急2025 DAY1 オフィシャルライブレポート
我らが冬の風物詩・“響都超特急2025”を楽しむため、京都パルスプラザには朝早くから多くの音楽ファンが集っていた。開場は予定より約15分遅れたが、イベントMCのやべきょうすけ氏による注意事項が説明される中、観客が元気よく詰めかけて金閣ステージの広いフロアを埋めていく。
開演10分前にはステージにROTTENGRAFFTYの5人が登場。1人ずつ挨拶した後、最後にNOBUYA(Vo.)から「何か困ったことがあったら近くのスタッフ捕まえて教えて。絶対にすぐ改善するので」と伝え、例年より更に熱量高い「響都超特急!」「2025!」「出発!」「進行!」のコール&レスポンスが響き渡る。ステージの5人も観客も、2日間を全身全霊で楽しもうという強い覚悟と意志をビシビシと感じる、大きな大きなコール&レスポンス。遂に“響都超特急2025”が発車した。

こやまたくや(Vo./G.)の「はじまるよー!」という大号令で金閣のトップバッターを飾ったヤバイTシャツ屋さん。ありぼぼ(Vo./Ba.)が産休から復活して1発目のライブということも影響しているのか、ステージの3人もオーディエンスも初っ端からフルテンション。「ヤバみ」「Tank-top of the world」「あつまれ!パーティーピーポー」などステージから放たれる気合満点のキラーチューンと、客席から返されるクラップとコールで既に興奮は桁外れ。朝イチなど関係なく凄まじい熱量でオーディエンスが飛び跳ねる。観客たちのキラキラとした表情は「楽しい」というより「嬉しい」という言葉がぴったりな、多幸感に溢れたもの。きっとみんながみんな、今日という日を待ちわびていたのだろう。
そしてこやまが「ROTTENGRAFFTYとヤバTの共通点は、ダイバーが多ければ多いほどかっこいいと思っているところ!」と言い、「全然足りひんのちゃうんけ!」と客を煽りに煽り、全力で駆け抜けたステージを全員が踊り狂った「かわE」で締め括る。




ステージを所狭しと走り回って会場を巨大なダンスホールへと塗り替えたFear, and Loathing in Las Vegas。幕開けの「Return to Zero」からダイバーが続出し、So(Clean Vo./Scream Vo./Prog.)の「響く都のすごいところ見せてくれ!」という声に応えてオーディエンスは勢いを更に加速させる。
「Step of Terror」「Party Boys」と散々会場を揺さぶった後、Soが「俺らに出来ることは限られている。エナジー系、ハイパー系、根性系しか出来ないので、俺らと一緒にぶち上がってくれますか!」と追い打ちをかけ、客席から大きな大きな歓声が沸き起こって会場の熱はぐんぐんと上昇。Minami(Scream Vo./Key./Prog./Rap.)は何度も客席に突入し、Taiki(G./Cho./Vo.)、Tetsuya(Ba./Cho./Vo.)、Tomonori(Dr.)が極上のアンサンブルを組み上げてオーディエンスを終始踊り狂わせ、最後の「Twilight」でSoも客席エリアに突入。観客と一緒に暴れ尽くしたライブは、ライブキッズたちを大満足させた。




銀閣も芸人も負けてはいない。地元の京都魂を見せつけて銀閣のトップバッターを飾ったBrown Basket、パワフルなヴォーカルとソリッドなサウンドでオーディエンスを圧倒したw.o.d.。はるかぜに告ぐ、ヨネダ2000、オダウエダなど芸人たちも次から次へと会場を沸かせ、オーディエンスは一瞬たりとも休むことなく“響都超特急2025”を楽しみ尽くす。昨年までは観客としてダイヴやモッシュをしていたというザストロングパンタロンXは出演出来た喜びをラップとアッパーなサウンドに乗せて爆発させ、Age Factoryは鋭く尖ったロックンロールを鳴らして銀閣のオーディエンスを狂喜の渦へ落とし込んだ。







マイク1本でステージに立ったANARCHYは、金閣のフロアに居合わせた全員の心を鷲掴みにした。「ロックにマジで感謝。ラッパーがここに参加してもいいかな?」と挨拶した後、「Fate」で繰り出されるリリックのひとつひとつが突き刺さり、衝動を爆発させたような「K.I.N.G.」で強く強く胸を打たれる。「俺みたいなラッパーでも諦めずにやったらこんなステージに立てる」と言って始めた「1mm」にとてつもなく心を揺さぶられ、その後に披露された「奇跡」でその場から動けなくなる。今日が誕生日という観客の1人だけに向けられた「セプテンバーセカンド」、背中を強く押されたような感覚に包まれた「あいつの事」。最初から最後まで魂がこもったリアルなライブに圧倒された。




1日目が中盤に差し掛かった頃、金閣にはROTTENGRAFFTYの盟友・10-FEETが登場。TAKUMA(Vo./G.)が「今日は出口全員笑って出よなー!」と叫び、オーディエンスが大歓声を上げる。その反応を見てTAKUMAが「あ、ごめん(笑)。そう言うといて古い曲を…新曲やと思って聴いて」と「SEASIDE CHAIR」でライブスタート。あまり聴けないレア曲に観客は興奮をあらわにしてダイバーが続出し、その勢いのまま「VIBES BY VIBES」「ハローフィクサー」でサークルモッシュやダイバーが乱発。ライブを思う存分楽しんでいる観客は新曲「スパートシンドローマー」の大きくうねるようなサウンドスケープに身を任せ、「その向こうへ」「第ゼロ感」というキラーアンセムの連発に腕を振り上げ、飛び跳ね、モッシュにダイヴと暴れまくる。
MCでは、TAKUMAが「ROTTENGRAFFTYに贈る言葉はもう言い尽くした」と言い、昔ROTTENGRAFFTYのHIROSHI(Dr.)の車の中にカバンを置いたままにしていたところ車上荒らしに遭って色々と盗まれ、そのカバンを一緒に探すためにN∀OKI(Vo.)とNOBUYAに連絡したところNOBUYAが長い角材を持って来た、という思い出話で観客を笑わせつつ、「ヒトリセカイ」を全員で歌い、少しだけ持ち時間が残っているということで「笑って帰れるように」と「SHOES」を披露して会場を笑顔で埋め尽くす。“ライブを楽しむこと”に全振りした、心憎いステージだった。




「ライブハウスに来るような人にまともな人は1人も居ません! 月火水木金曜日、まともなフリしてお疲れ様でした!」という林萌々子(Vo./G.)の痛快な挨拶で幕を開けたHump Backは、1曲目の「番狂わせ」から一気に会場全体を一体感で包み込む。「僕らの時代」の曲中に「今だけはROTTENGRAFFTYのことを考えずにHump Backのことだけを考えて」と歌うように言い、「知ってるか知らないか。そういうの大したことじゃないねん。一緒に遊びましょ」と言って「ロケンロ」を歌う。
2ヶ月前というギリギリのタイミングでROTTENGRAFFTYのNOBUYAから連絡があり出演を決めたという彼女たちは、「これでROTTENGRAFFTYに貸しが1つ出来たなって。みんな証人になってください」とひと回り以上先輩のバンドから頼りにされたことを誇りに思い、その喜びをライブで爆発させる。
そして最後は「死ぬまで好きなことをやってええ感じで死んでいきたいと思います」と「明るい葬式」。“ロックンロールであの子を食わせていくのだ”という歌詞に歓声が沸き起こる。ステージから放たれた言葉や音の1つ1つから意志を感じる、説得力のあるライブはとてもかっこよかった。




ROTTENGRAFFTYへの感謝の気持ちを述べつつ、それに甘んじることなく「“こいつらやっぱりいいバンドだな”って思わせるようなライブをして帰るつもりです」と橋本学(Vo.)が気合いを剥き出しにしたハルカミライ。「君にしか」「カントリーロード」と畳み掛け、「ファイト!!」〜「俺達が呼んでいる」の流れを中断して繰り返し、いつの間にやら会場はダイバーが途切れない沸騰状態に突入。メンバーがステージからはみ出るほど縦横無尽に暴れまくるにもかかわらず、ライブの軸が一切ブレない確かなステージングにオーディエンスは熱狂し、思い切り拳を振り上げて橋本と一緒に歌う。
汗だくになってライブを楽しんでいる客席に目を向けて「さすが、めちゃくちゃ元気な奴が多いわ。あっぱれだぜ」と橋本は歓喜し、目をギラつかせたまま魂を込めて歌う。会場全体を巻き込んで突き進んだライブは「アストロビスタ」を滔々と歌い上げ、最後は「世界を終わらせて」を全員で歌い切って大団円。




ライブ開始直前、ステージ袖に居た4人の掛け声が客席まで聞こえてきたRIZE。大きな歓声で迎えられた彼らは切れ味抜群の「PARTY HOUSE」でライブをスタートさせ、気迫あふれる演奏で攻めに攻める。巨大なコール&レスポンスが沸き起こった「TKC」、オーディエンスの脳と意識を存分に揺さぶった「ONE SHOT」、畳み掛けるようなJESSE(Vo./G.)のリリックが心地いい「In or out」。その場で生み落とされたような瑞々しい鮮度で言葉の1つ1つが突き刺さる「heiwa」。
タフなミクスチャーサウンドに熱狂の声を上げるオーディエンスにKenKen(Ba.)が笑顔を向け、超攻撃的な「日本刀」を放って会場の興奮を臨界点まで引き上げる。そして最後はキラーチューン「カミナリ」を投下。JESSEが「悪いが歌わせてもらうよ。全員でいこうぜ!」と煽り、狂喜乱舞したオーディエンスが我先にと宙を舞う凄まじい光景を作り出した。




ROTTENGRAFFTYのHIROSHIが加わったスペシャルな吉本新喜劇と中山功太が“笑い”で会場を沸きに沸かせる。銀閣ではROTTENGRAFFTYの盟友・G-FREAK FACTORYがギュウギュウに詰めかけたオーディエンスの興奮を限界まで引き上げ、dustboxはROTTENGRAFFTYの侑威地(Ba.)とMASAHIKO(G.)を交えて「D.A.N.C.E.」(ROTTENGRAFFTYカヴァー)で盛り上げ、更に「Neo Chavez 400」では侑威地 とNAOKI(10-FEET)を加えたスペシャルコラボで観客は大歓喜(NAOKIにベースの座を奪われた侑威地は客席へ投下)。SPARK!!SOUND!!SHOW!!はROTTENGRAFFTYのNOBUYAとMASAHIKOが加わったスペシャルな「PAOM」でオーディエンスを大喜びさせ、その後もキレッキレのライブで銀閣トリを堂々と勤め上げる。歴戦の猛者たちが次から次へとしのぎを削るように凄まじいライブを繰り広げ、ラストを飾るROTTENGRAFFTYへとバトンを繋いでいった。





赤い照明に浮かび上がる金閣のステージにサイレンが鳴り響く。観客がざわめく中、ROTTENGRAFFTYの5人がステージに登場。N∀OKIが「愛と平和と熱を乗っけて、音で殺して、何度でも甦れ!」と叫んで「零戦SOUNDSYSTEM」でライブスタート。最初から全身全霊でライブする前傾姿勢はステージの5人も観客も同じ。全員が後ろを振り返らず、明日のことは考えず、この瞬間に命を燃やすような激しく凄まじく美しい光景。フロアが大きくうねり、観客1人1人が放つ歓声が大きな塊となってステージに襲いかかる。
NOBUYAとN∀OKIという強烈な個性を持ったツインヴォーカルが目まぐるしく入れ替わる「PLAYBACK」で魅了し、ライブハウスに狂宴を作り出す「D.A.N.C.E.」を全力で踊り尽くす。
そしてN∀OKIが「選手交代のお知らせー!」と言い、ベースにKenKen(RIZE)を迎える。「人に頭を下げるのが嫌でバンドを始めたのに、1年でこの2日間がいちばん頭を下げた回数が多い」とNOBUYAが言い、「今日は遠い所ありがとう。最後まで残ってくれてありがとう」とまた頭を下げる。そしてギラリと目つきを変えて「お前ら殺す気でかかってこい!」と2回吠えて「THIS WORLD」へ。大きな一体感を作り出して懐の深さを見せたと思ったら会場を一気にカオスへと叩き落とす愛情たっぷりのドSっぷりは今年も健在だ。
N∀OKIが2000年にライブハウスから始まったこのイベントの歴史を振り返りつつ、「とんでもないエネルギーがこの2日間充満してる。全部もぎ取ってくれ!」と言って始めた「ハレルヤ」は全員が一緒に歌い、凄まじい数のダイバーが発生。N∀OKIがステージ中央で歌っている間はNOBUYAがステージの端まで足を運んで客席の隅々にまで視線を向ける。まったく油断できない、1秒たりとも気が抜けない。
もはや当フェスのアンセムとも言える「響都グラフティー」を全員で歌い、ANARCHYがゲスト参加したスペシャルな「DEST ROCKER’S REVOLUTION!!!!!」に陶酔し、観客の大合唱で「金色グラフティー」へ。
NOBUYAが「ダイバーがヤバTより少なすぎるやろコラァ!」と吠え、N∀OKIが「輝き狂え!」と叫んで演奏がスタートし、会場の熱気がピークに到達。観客の歌声のヴォリュームとダイバーの数がえぐい。フロアが沸騰したような熱狂に包まれたかと思えば、NOBUYAが観客をケアするために曲を中断させ、「金色グラフティー」をもう一度最初から演り直すという流れに。そして再び始めた「金色グラフティー」にオーディエンスは先ほど以上に熱狂し、MASAHIKOと侑威地がステージを広く使って客席を煽りに煽り、HIROSHIがリズムを刻みながら客席に笑顔を向け、会場は多幸感溢れる狂乱のカオスへと突入。ROTTENGRAFFTYのライブでしか体験できない瞬間を味わい尽くす。そして本編最後は「暁アイデンティティ」。N∀OKIの「出し惜しみするな。余力を残すな。後悔はするな」という言葉通り、全員が全力で最後の一音までライブを楽しんだ。
アンコールはdustboxとのコラボユニット・dust’nGRAFFTYの「nothing to be afraid of 怖れるものはなにもない」、そしてdustboxと10-FEETのTAKUMAでの「切り札」というスペシャルなコラボで魅了し、最後は残りの体力と気力を振り絞って「秋桜」で大団円。
ROTTENGRAFFTYでしか作り得ない、様々なカルチャーとジャンルと世代が交錯した唯一無二のフェス。“響都超特急2025”は、その真髄が詰まっている感触があった。果たして明日はどのようなライブが待っているのだろうか。




TEXT:Takeshi.Yamanaka