響都超特急2025

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響都超特急2025 DAY2 オフィシャルライブレポート

 早朝から降っていた雨は上がり、地面は濡れてはいるが幸いなことにイベントには大きな影響がなさそうな見込み。“響都超特急2025” 2日目。今日はいったいどのようなライブが繰り広げられるのだろうか。昨日ROTTENGRAFFTYのN∀OKI(Vo.)がMCで「とんでもないエネルギーが充満している」と言ったように、2日目のラインナップも歴戦の猛者揃い。開演前から会場の熱気は非常に高いものだった。

 開場時間を迎え、イベントMCのやべきょうすけ氏が注意事項を説明していく中、金閣のフロアには観客が続々と詰めかける。開演10分前になってステージにROTTENGRAFFTYの5人が登場し、客席から大きな歓声が湧き起こる。メンバー1人1人が1日目を振り返りつつ、今日の意気込みを述べ、ステージ最前から最後方まで観客でびっしりと埋め尽くされたフロアに「響都超特急!」「2025!」「出発!」「進行!」という恒例のコール&レスポンスが響き渡って2日目がスタートした。

Photo by かわどう

 金閣のトップバッターは昨年出演が急遽出来なくなったTHE ORAL CIGARETTES。メンバーがステージに登場する前からオーディエンスは準備万端、SEに合わせてクラップの波が自然発生し、メンバー登場で会場のボルテージは最高潮に到達。
 山中拓也(Vo./G.)は「俺らにトップバッター任せて良かったとしっかり思ってもらえるように。そして去年のリベンジをここで果たせるように」と気合い一閃「Shala La」でライブスタート。オーディエンスとの完璧な掛け合いから金閣は巨大な一体感に包まれ、客席と共にライブを作り上げていく美しく激しい景色が描き出される。
 客席からのコールとクラップを曲の中に飲み込んで増幅させた「Mr.ファントム」、観る者の気持ちをぐいぐいと引っ張っていく強いカリスマを見せつけた「BUG」、地響きがするほどオーディエンスをジャンプさせた「Naked」。ROTTENGRAFFTYのNOBUYA(Vo.)がゲスト参加した「5150」で無数のダイバーを宙に舞わせ、「朝イチからありがとう」と「狂乱 Hey Kids!!」でフロアを狂乱の渦に落とし込んだ観客全員大満足の濃密なステージ。気合いが入りまくったライブでトップバッターを見事に勤め上げた。

THE ORAL CIGARETTES Photo by Taka”nekoze photo”

 軽快かつメロディアスなサウンドでオーディエンスを存分に暴れさせたSHANK。先週は彼らが主催するフェス“BLAZE UP NAGASAKI 2025”にROTTENGRAFFTYが出演し、そして今週はROTTENGRAFFTY主催の“響都超特急2025”にSHANKが出演ということで、イベント主催というお互いの期待に応えるように、全力で熱いライブを展開して会場の盛り上がりを加速させていく。「Departure」「Two sweet coffees a day」「620」「Weather is Beautiful」とライブキッズ垂涎の名曲を連射して何度もダイバーを打ち上げた後、「ROTTENGRAFFTYありがとうございます!」と頭を下げた庵原将平(Vo./Ba.) 。その流れで「NOBUYAさん殺すとか言わないほうがいいですよ。愛情を受けずに育ったので言っちゃうんでしょうね(笑)。代わりに謝っておきます。ごめんなさいね」と言って会場を沸かせる。
 SHANKの熱い魂のこもったステージに、客席にいた子供も拳を振り上げてノリノリ。聴けば思わず身体が揺れるご機嫌なチューンでオーディエンスを心から楽しませていく3人。「NOBUYAさんに好きと言ってくれた曲演るわ」(“響都超特急”に来たことがある人は同じように「NOBUYAのさんに好きと言われた…」的な話をいろんな出演者のMCで聞いたことがあるだろう/こういうとところにも出演者と音楽に対する愛を感じてぐっと来る)と言って披露した「Honesty」で我々を魅了し、最後は「submarine」で思い切りライブを遊び尽くして終演。

SHANK Photo by 岩渕直人

 ROTTENGRAFFTYのカヴァー「THIS WORLD」というドラマチックな幕開けにオーディエンスが歓喜の声をあげたDragon Ash。ヘヴィかつエッジの効いたアンサンブルで多くのダイバーを誘発させた「Mix It Up」、櫻井誠(Dr.)とBOTS(DJ)が繰り出すリズムに脊髄反射して弾けるように観客がお祭り騒ぎした「For divers area」。Dragon Ashが作り出したのは、1秒も冷静な瞬間がない、全ミュージックラバーが歓喜するであろう至福のエンペラータイム。更に手を緩めることなくKj(Vo./G.)が「暴れろ!」と「ROCKET DIVE」へ突入し、金閣ステージの勢いは加速するばかり。出し惜しみなく「百合の咲く場所で」へと続き、汗だくのキッズたちは腕を振り上げ、声を絞り上げてライブに参加する。
 曲中でKjは「ロットンはお前らのものだ!」「ロットンと松原が俺たちに教えてくれた。証明してみろ!」と叫び、その言葉に魂を震わせられたオーディエンスが感情を溢れさせてステージ方向に身を投じていく。全員が腹の底から声を出して歌った「Fantasista」、山嵐のSATOSHI(Vo.)とXmas EileenのKO-JI ZERO THREE(Vo.)が加わった「ROCK BAND Feat. SATOSHI, KO-JI ZERO THREE」、そしてKjが何度も「跳べ!」と煽って凄まじい景色を作り出した「Iceman」まで、何度も何度も歌い、叫び、暴れ、踊り、舞い続けた。

Dragon Ash Photo by Taka”nekoze photo”

 GEN(Ba./Vo.)とオーディエンスの歌で「Buster call」をスタートさせた04 Limited Sazabysは、RYU-TA(G./Cho.)が力強く鳴らしたギターが胸を焦がす「fiction」、ステージから放たれる音の圧を増幅して会場全体を巻き込んでいった「magnet」と、休む間もなくフロアの至る所にサークルとモッシュを作り出していく。
 「人間丸出しROTTENGRAFFTY、愛してます。ありがとうございます」とGEN。序盤からステージまで靴やスマホが飛んできたと彼が言うように、会場の盛り上がりは尋常ではない。その状況にまだ満足出来ないのだろう、GENが「事故ギリギリのスピードで駆け抜けましょう!」とオーディエンスを挑発し、アグレッシブに曲を重ねて会場の興奮を塗り重ねていく。「脳も心も感情も、筋肉みたいに使わなければ衰えていく」「目の前のすべてのことを感じろ!」と言って始めた「Feel」でオーディエンスのエモーションとテンションをぐっと持ち上げ、「monolith」で攻めに攻め、最後の「Remember」まで一気に駆け抜けた。

04 Limited Sazabys Photo by

 強烈な存在感を放つ大森靖子のライブから始まった銀閣は、フレデリック、SHINGO★西成、KUZIRAが観客を思う存分に熱狂させた。ライブ転換中に登場した芸人ステージでは、ぎょうぶ、チャンス大城、例えば炎、そして2日目はROTTENGRAFFTYのN∀OKIが参加した吉本新喜劇、金属バットが思う存分に爆笑をさらっていった。ジャンルやシーンを超えて個性豊かで百戦錬磨な猛者たちのライブを同時に楽しめるのは“響都超特急”の最大の魅力の1つ。

大森靖子 Photo by
フレデリックPhoto by かわどう
SHINGO★西成 Photo by 岩渕直人
KUZIRA Photo by かわどう
ぎょうぶ Photo by Taka”nekoze photo”
チャンス大城 Photo by 岩渕直人
例えば炎 Photo by Taka”nekoze photo”
吉本新喜劇 Photo by
金属バット Photo by

 ステージ前の客席エリアには無数の肩車が出来上がっていて、HEY-SMITHが「Be The One」でライブをスタートさせた途端に無数のダイバーが打ち上がる。会場はスカダンスで埋め尽くされ、6人が放つ極上の音楽に酔いしれる。「Living In My Skin」と続き、満(Sax.)、イイカワケン(Tp.)、UME(サポートTb.)が放つ音色に大きな歓声が返され、観客の歌声がどんどん大きくなっていく。 
 「ROTTENGRAFFTYには今年死ぬほど世話になった」と猪狩秀平(G./Vo.)。彼らが主催する“HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2025”にCrossfaithが出演出来なくなったときに助けてくれたのがROTTENGRAFFTYということで、「どうやって返したらいいのか…今日とにかく全力でライブする!」と猪狩が宣言。その意気込みに応えるようにオーディエンスの興奮は終始最高値を叩き出し、客席の熱量がえげつない。「Endless Sorrow」でモッシュとダイヴ、サークルピットが無限発生し、拳を振り上げて髪を振り乱しながら「Download Me If You Can」を全力で歌い、身体を揺らし、踊り、叫び、会場の興奮と比例してフロアの温度と湿度もぐんぐん上昇。じっと立ってライブを観ているだけでも汗ばんでくる。「Let It Punk」でもう一度限界までテンションを上げた後、猪狩が「本当にありがとうございました。来年もよろしくお願いします。また先輩に会えるように」と言って「Goodbye To Say Hello」で暴れ尽くして終了。HEY-SMITHの全力とオーディエンスの全力がぶつかり合った最高のライブだった。

HEY-SMITH Photo by Taka”nekoze photo”

 ROTTENGRAFFTYのNOBUYAとN∀OKIと共にステージに登場し、2人を交えた状態でライブをスタートさせた黒夢。幕開けとなった「寂寞」をスペシャルな編成で演り切った後、清春(Vo.)が「こんばんは。黒夢ROTTENGRAFFTYです。今日はNOBUYAくんがセットリストを全部決めました」と言って大歓声が起きる。そして次はROTTENGRAFFTYの「相殺微量サイレンス」のカヴァーという、なんとも贅沢なコラボ。NOBUYAとN∀OKIという個性的なツインヴォーカルに清春の力強い歌が加わった同曲はまさに特別な1曲。オーディエンスはまさかの瞬間に立ち会えたことに歓喜の声をあげる。
 2人がステージを去った後、「Like@Angel」と「MARIA」の圧倒的な存在感でオーディエンスを魅了し、清春がアコギを持って「少年」をスタートさせたと思ったらギターを弾くのに邪魔になるからとパーカーの袖をスタッフに持たせたり、曲を中断させたりと、彼の自由奔放な振る舞いで会場が温かい雰囲気に包まれる。
 N∀OKIが再び加わって「後遺症」のスペシャルコラボで熱狂の渦を作り出したのだが、ただでさえライブ開始の時間が押していた上にMCも多めだったことを見かねてNOBUYAが再登場。「演りましょう」とライブの締め括りはNOBUYAとの「BEAMS」。立ち振舞いは自由そのものな清春だが、ライブが始まれば強烈な存在感と神々しいまでの歌の力に一瞬で惹き込まれていく。黒夢のロックンロール魂が爆発した、贅沢かつ貴重なライブだった。

黒夢 Photo by かわどう

 SHOW-HATE(G.)、GODRi(Dr.)、SIN(Ba.)の順で勢いよくステージに飛び出してきたSiM。3人が音をぶつけ合ったところでMAH(Vo.)が登場し、「生きてるか京都?」と叫ぶ。客席から「オオーッ!」と大きな歓声が返されたと思えば「じゃあ死ね!」と「KiLLiNG ME」を投下し、ステージ前に群がるオーディエンスを狂ったように暴れさせる。更に「座れ!」とオーディエンスに命じ、全員が座るまで時間がかかっていたところで演奏を止めて「時間が押してるから、俺らのライブで時間食ってたらROTTENGRAFFTYが曲を削らないといけない…だからまだまだ待ちます!」と悪魔の悪ふざけ。自由奔放な出演者はここにも1人居た。
 しかしすぐにライブを再開させた彼らは「I HATE U」で巨大サークルをいくつも作り出し、「GUNSHOTS」ではモンキーダンスでオーディエンスを踊り狂わせる。
 そしてMCではプロレス好きというMAHがジョン・シナというWWE所属の有名プロレスラーの名前を挙げ、そのシナの座右の銘が「ネバー・ギブアップ」だということ、そして彼の引退試合が日本時間で今日だったということ、シナがギブアップ負けをしたこと、シナの引退試合でMAHが「引き際が大事」という教訓を得たことを滔々と話していく。時間が押していると言っていたのに、なぜこんな話をMCで長々としゃべったのか。「?」が会場中に浮かび上がったところで彼は話題を変えて、“響都超特急”のケータリングにはサラダが無く以前から憤慨していたこと、そして今年は晴れてサラダバーがケータリングに追加されていたこと、しかしながらサラダバーのクオリティがMAHの基準を超えていなかったことなどを話しつつ、先ほどのシナの話にかけて「“響都超特急”でのサラダのことはもう諦めた。これで終わり!」とMCを締めて爆笑をさらう。
 ライブを再開した彼らは怒涛の波状攻撃でオーディエンスを再び熱狂の渦に落とし込む。彼らの鍛え抜かれた演奏力を持って鳴らされる「DO THE DANCE」「Blah Blah Blah」はライブで真価を発揮し、モッシュ、ダイヴ、ウォールオブデスが乱発して金閣ステージは手が付けられない沸騰状態に。ラストは「f.a.i.t.h」を全力で演り抜いてステージを去っていった。

SiM Photo by Taka”nekoze photo”

 銀閣ステージの後半は山嵐、バックドロップシンデレラ、四星球といった個性的かつライブハウスシーンの化け物揃いという超贅沢なラインナップ。観客でパンパンに埋め尽くされた銀閣のフロアを熱狂させ、揺さぶり続け、暴れさせ、汗だくの笑顔で埋め尽くして魅了した。

山嵐 Photo by 岩渕直人
バックドロップシンデレラ Photo by
四星球 Photo by 岩渕直人

 “響都超特急2025”もいよいよ大詰め。N∀OKIが「最終列車! その鼓動、命で進め!」と叫んでROTTENGRAFFTYのライブがスタート。HEY-SMITHのホーン隊3人が加わった「Error…」で初っ端から会場のテンションは限界突破。ステージの上も下も、持てる力を振り絞って全力で真っ向勝負を仕掛けていく。全員が両手を振り上げて叫んだ「ハレルヤ」では制御不能なほどにダイバーが乱発。客席からの大合唱は凄まじく、とてつもない感情が金閣の広い空間に充満していく。何が起こるかわからない、ライブハウス特有のヒリヒリとした緊張感が心地いい。
 ステージ左右に据え付けられたビジョンに「夢幻獄」のMVが流され、強烈な音の圧力と貫通力の高い歌に圧倒される。そしてステージの5人が1つになって音を放った「世界の終わり」のインパクト。出演者たちが口を揃えて「ROTTENGRAFFTYのような先輩がたくさんライブをするからこっちは休めない」と言っていたように、歴戦のライブで鍛え抜かれた5人のアンサンブルは最強で、バンドとしての表現力の幅と奥行きを見せつけられて舌を巻く。
 「サラダバーをいじってくる奴が居たり、自由が過ぎる先輩が居たり…でもみんなかっこいいライブをしてくれて2日間ありがとうございました」と出演者たちに頭を下げ、更に客席に向けて「お前らもこの時間まで残ってくれてありがとう」とNOBUYA。そして「ここまで残ってるということは、当然お前らは頭がイカれてるんですよね?」と重ね、「殺す気でかかってこい!」と吠えて「THIS WORLD」へ。ネジが何本も外れたかのように音楽に乗って暴れ狂うオーディエンスと、その熱狂に満足せず、歌と演奏の熱を更に強めるROTTENGRAFFTY。N∀OKIが歌い、NOBUYAが客席に突入、MASAHIKO(G.)は激しくギターを鳴らし、侑威地(Ba.)は笑顔で客席を眺め、HIROSHI(Dr.)はストイックにリズムを刻む。5人の個性はバラバラだけど、バンドとしての一体感が強靭過ぎる。ライブ中にメンバーが何をしようが、彼らが鳴らす音楽は我々の心をぎゅっと(血がにじむほどに)強く掴んだまま離さない。
 N∀OKIが「まだ感じたことが無いところまで、果てまで、音楽で共に行こう!」と力強く叫び、「この曲に何度も救われた。心の根で聴いてくれ! 感じてくれ!」と言って突入した「マンダーラ」。Dragon AshのKjも途中で参加し、同曲に込められたその想いの強さに触れて胸が締め付けられ、心が震える。その後、当フェスの代名詞とも言える「響都グラフティー」へと続き、客席からは大きな大きな歓声が湧き起こり、会場が得も言われぬ高揚感に包まれていく。
 観客全員の大合唱で始まった「金色グラフティー」でNOBUYAは客席エリアを睨みつけて「今日初めて言うわ…ダイバーの数、多すぎるやろコラ!」と怒りの声をあげて「いつもありがとう」と言葉を添える。N∀OKIの「輝き狂え!」で演奏スタートした同曲は、まじでダイバーの数が多すぎで、曲が終わるまでずっとその状態のまま。そして本編は「秋桜」で駆け抜けて本編終了。
 アンコールでは大森靖子との「ASIAN MARKET POW」、そして1年に1回しか聴けない「悪巧み 〜 Merry Christmas Mr.Lawrence」というスペシャルなセットで魅了し、最後は「響く都」でお祭り騒ぎして大団円。全員が狂っていて、全員が愛おしいライブだった。 

ROTTENGRAFFTY Photo by かわどう / 岩渕直人 / Taka”nekoze photo” /

 この日、N∀OKIは「THIS WORLD」の前に「齢の所為にしない」と言い、「マンダーラ」の最後の歌詞を変えて“やっとわかりました。いや、わかってた。自分を信じて貫け”と歌うように叫び、「響都グラフティー」を始める前に「26年前の落書きも今や立派なアートになっていた」と言った。ROTTENGRAFFTYというバンドの本質が、その言葉たちに詰まっているような気がした。

Photo by かわどう

TEXT:Takeshi.Yamanaka

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