響都超特急2023 DAY1 オフィシャルライブレポート

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2020年は中止、2021年と2022年は色々と制限がある中で開催されたROTTENGRAFFTY主催のフェス “ポルノ超特急”が今年、“響都超特急”へと名前を変え、いよいよ本来の形で開催される。会場となる京都パルスプラザには、朝早くからバンドTシャツ/フェスTシャツに身を包み、頬を高揚させた音楽ファンが続々と詰めかけていた。

 ひと目見るだけで圧倒されるメタリックで荘厳なセットが組まれたステージ。イベントMCのやべきょうすけ氏が登場し、注意事項が説明された後、主催者であるROTTENGRAFFTYのメンバーが登場。恒例となったメンバーと観客によるコールでいよいよイベント開始。“響都超特急2023”が出発した。

 金閣ステージのトップバッターを飾るのはヤバイTシャツ屋さん。こやまたくや(Vo./G.)が「フェスの本来の姿を取り戻しに来ました!」と叫べば客席からは大歓声。「ヤバみ」「あつまれ!パーティーピーポー」「無線LANばり便利」とライブキッズ垂涎のキラーチューンを連発し、会場の温度をぐんぐん上げる。ROTTENGRAFFTYの「D.A.N.C.E」のカヴァー(2019年12月リリースのトリビュートアルバム『ROTTENGRAFFTY Tribute Album ~MOUSE TRAP~』でヤバイTシャツ屋さんがカヴァー参加)では、ROTTENGRAFFTYのNOBUYA(Vo.)とN∀OKI(Vo.)がスペシャルゲストで参加し、超巨大サークル、モッシュ、ダイヴ、ウォールオブデスなど、オーディエンスは1バンド目から全力で遊び尽くした。

 銀閣ステージでは初出演となるINKYMAPがライブをスタート。音のひとつひとつの強度が高く、聴く者の胸に深く突き刺さる力強いサウンドでオーディエンスを魅了する。Kazuma(Vo./G.)が「どうせみんなライブバカなんだろ? もっとバカになろうぜ!」と叫べば、その声に応えるように客席の勢いは更に加速。ステージの4人は全力で跳ねまわり、気持ちを爆発させてロックサウンドを響かせた。

 楽器陣が紡ぎ合う極上なアンサンブルでライブの幕を開けたのはG-FREAK FACTORY。昨年は出演が決まっていたものの、Moteki(Vo.)が新型コロナウイルス感染症に感染して急遽キャンセルとなり、盟友・SHANKに代役を託した彼ら。Motekiが「帰ってきたぜ!」と喜びを爆発させたステージはどこを切り取っても見どころ&聴きどころが満載で、温かく愛の溢れたサウンドとステージングに観客は釘付け。「らしくあれと」の歌詞を“ライブハウスに帰って来いよ”と変えて歌えば大きな歓声が沸き起こり、「大切な仲間であるROTTENGRAFFTYが毎年大切にしているこの“響都超特急”…田舎でフェスをやることがどれだけ大変なことか」と、同じく地元・群馬で“山人音楽祭”を主催する彼らの言葉にぐっと惹き込まれる。N∀OKIが参加した「Sunny Island Story」で予定していた楽曲をすべて終えた後、Motekiがひとりステージに残って紡がれた数々の言葉が突き刺さる。ローカルバンドの最高傑作が大切な仲間に贈った渾身のライブ。圧巻だった。

 1曲目からテンションMAXで銀閣に集まった観客の心を鷲掴みにしたのはNEMOPHILA。シャウトやスクリーモを織り交ぜたmayu(Vo.)の縦横無尽なヴォーカリゼーション。楽器陣によるハードコアかつヘヴィメタルなサウンド、ステージを大きく使ったダイナミックなライブにオーディエンスは歓喜の声を上げ、拳を突き上げ、頭を振って全力で没頭する。来年2月には日本武道館でのワンマンライブも控えている彼女たち。その実力をまざまざと見せつけた凄まじいステージだった。

 圧倒的なオーラを纏い、強烈なライブで金閣の観客を大興奮させたMUCC。ミヤ(G.)とYUKKE(Ba.)が繰り出すタイトで洗練されたサウンドに身を任せ、逹瑯(Vo.)がカリスマ的なステージングでクラップの波を起こしたかと思えば、息もつかせずダイバーを多発させ、この場を完全に支配する。イントロから観客が歓喜の声をあげた「蘭鋳」では、会場が大きな一体感で包み込まれる。様々なジャンル、様々な音楽、そして個性あふれる猛者たちが並ぶ中、彼らは唯一無二の個性を放ってオーディエンスを完全に掌握した。

 銀閣ステージでダイバーを続出させたHERO COMPLEX。聴く者が身体を揺らさずにはいられないライブチューンを連発し、一瞬たりとも興奮を途切れさせない。三木風太(G./Vo.)の「俺らがバンドを始めるよりも前から、ずっと走り続けている先輩が前に居てくれるのはすごくありがたい」という言葉に胸を熱くする。ステージ上と客席の呼吸がぴったりと合った強烈な一体感のまま一気に走り抜けた。

 橋本 学(Vo.)がいきなり客席最前の柵の上に乗り、「君にしか」で華々しくライブをスタートさせたハルカミライ。程なく関 大地(G./Cho.)も客席に降り、自由に展開させるライブは流石の一言。破天荒に見せつつも一切崩れない確かな演奏力と、橋本が放つ高純度の歌。バンドが持つ高いポテンシャルを存分に発揮した圧倒的なステージ。「今日は独り占めしていた音楽をみんなで分け合わないか? そうしよう」「もう京都だけのフェスじゃない。みんなのことをこのフェスが待っている」という説得力のある言葉と歌に、金閣を埋め尽くしたオーディエンス全員が魅了された。

 ライブハウス歴戦のバンドが並ぶ中、HIP HOPで銀閣の心を鷲掴みにしたのはジャパニーズマゲニーズ。ROTTENGRAFFTYとイベントで共演した際にN∀OKIから声をかけられたのが出会いであり、今回の出演に繋がったという彼ら。「なんで今日ジャパニーズマゲニーズで明日ANARCHYが出るのかというと、HIP HOPを伝えろということやと思う!」と孫GONGが力強く言い放つ。極上のトラックと共に放たれる説得力のある彼らのHIP HOPは、銀閣に集まった観客たちの胸に深く刻まれた。

 Hiro(Vo.)の「初参戦でございます。どうぞお手柔らかに」という謙虚な言葉とは裏腹に、1曲目の「MONSTER」から観客を喰いにかかったかのような勢いで攻め立てたMY FIRST STORY。「Missing You」「ACCIDENT」とオーディエンスが暴れまくるライブチューンを連発し、ステージの上も下もテンションは最高潮。「ALONE」ではこの日最多と言えるほどのダイバーを誘発させ、最後はHiroが「全身全霊でぶつかってこい!」と啖呵を切って客席エリアに突入。汗だくの観客を終始歓喜させ続け、ダイヴやモッシュを一切途切れさせないライブだった。

 ロック界の奇行師・アルカラが銀閣ステージに登場し、胸を焦がす演奏と稲村太佑(Vo./G.)のオルタナティブなヴォーカルで観る者の心を揺さぶりまくる。今回が初出演だという彼らは、結成21周年を記念したライブで、対バン相手だったROTTENGRAFFTYのNOBUYAにステージ上から今回の出演をオファーされたとのこと。この日のセットリストもほとんどがROTTENGRAFFTYメンバーからのリクエストだったとのことで、両バンドの繋がりの深さと強さに胸を熱くする。「半径30cmの中を知らない」では途中からROTTENGRAFFTYのN∀OKIが参加して客席は大盛り上がり。イベントの節々で出演者同士の結び付きを伺い知れるのも、アーティスト主催フェスの醍醐味だ。

 「ROTTENGRAFFTYの親友、10-FEETです」とTAKUMA(Vo./G.)が言って10-FEETのライブがスタート。1曲目は、20数年前にROTTENGRAFFTYのN∀OKIからかけられた言葉が歌詞の一部の由来になっているという「RIVER」。昨年の“ポルノ超特急2022”のステージ上でTAKUMAが打ち明けたそのエピソードは記憶に新しく、翌年のライブ1曲目にその楽曲を選んだ理由を考えると胸がとても熱くなる。オーディエンスたちも同じく胸を熱くしているのだろうか、1曲目から会場の熱は最高潮。「1sec.」「Re方程式」と曲を重ねるにつれてどんどん会場の興奮が高くなり、数え切れないほどのダイバーがひっきりなしに打ち上がっていく。「こいつは裏切らへんわじゃなくて、こいつに裏切られたらしゃあないわ…そういうやつと付き合え。俺らにとってはそれがROTTENGRAFFTY」というTAKUMAの言葉で更に目頭が熱くなり、最後は「ヒトリセカイ」をみんなで大合唱。G-FREAK FACTORYもそうだったが、大切な仲間に贈った渾身のライブはやっぱり最高のひと言。この同世代3組の歩みを同じ時代に見ることができて本当によかった。

 Paleduskが銀閣に爆音を鳴り響かせる。観客全員を座らせてからのジャンプに会場が揺れる。視界が揺れるほどの激しく力強いサウンド。意識が朦朧とするライブハウスの感触が心地いい。Kaito(Vo.)が「やっと出れた」と出演の喜びを口にすれば、客席からたくさんの声が返される。ライブハウスの狂騒をそのままギュッと詰め込んだような彼らのステージは、観る者の感情を何度も何度も爆発させた。

 ハルカミライの橋本がステージで「今年のフェス史上、いちばんの異種格闘技戦かもしれない」と言ったその言葉通り、“響都超特急2023”の出演者は1日目も2日目も、各ジャンルのモンスターバンドが揃い踏み。そんな中、サウンドチェックから客席を大いに盛り上がらせ、ステージで唯我独尊の輝きを放ち続けたUVERworld。ライブ開始早々にROTTENGRAFFTYの「切り札」をカヴァーし、NOBUYAとN∀OKIも参加して金閣が歓喜の渦に包まれる。「2005年、パンパンのKYOTO MUSEに前座で呼んでくれた…その時の恩を返すのは今日」とTAKUYA∞(Vo./Programming)が言い、「仲良しこよしなんてクソ喰らえ。フェスに出る限りは一番を獲りにいく!」と吠える。その言葉通り、1曲1曲に全身全霊を込めて鳴らされる説得力のある音と言葉に金閣を埋め尽くしたオーディエンスは大興奮。力の限りを振り絞って彼らのライブを楽しんだ。

 銀閣ステージのトリを飾るのは、札幌で“KITAKAZE ROCK FES”を主催するNOISEMAKER。初っ端からタフなステージでオーディエンスを完全に支配し、巨大な一体感を作り出す。AG(Vo.)は同じフェスを主催する立場としてROTTENGRAFFTYに対してリスペクトの想いを告げ、「今年一番のフェスにしてやろうぜ!」と観客を煽って更にヒートアップ。「次はROTTENGRAFFTYです。みんなで楽しみましょう。またライブハウスで会いましょう」と「Nothing to Lose」を全力で演り切って大団円。1日目のトリ・ROTTENGRAFFTYへと熱い想いを繋いでステージを去った。

 響都超特急2023、1日目。残すところは1バンドのみ。金閣ステージの客席エリアを隙間なく観客が埋め尽くす。ステージ左右に設置された大型ビジョンに映像が流れ、NEXT ARTISTとしてROTTENGRAFFTYの名前がコールされる。会場を埋め尽くす大歓声。待ちに待った瞬間が訪れた。

 メンバーがステージに登場し、N∀OKIが「響都超特急! 最終列車! ぶっ飛ぶ準備は出来てるか?」と叫び、会場から大きな歓声が返される。「俺らが京都、ROTTENGRAFFTY!」と名乗りを上げて「ハレルヤ」でライブスタート。MASAHIKO(サポートG.)がめくるめくフレーズを響かせ、興奮が押し寄せる。我先にとはしゃぐ観客。その観客を更に煽るNOBUYAと、睨みつけるN∀OKI。客席エリアは既にお祭り騒ぎで、ダイヴとサークルが多発。「SPECTACLE」ではN∀OKIとNOBUYAが入れ代わり立ち代わり声を響かせ、侑威地(Ba.)とHIROSHI(Dr.)、そしてMASAHIKOが鋭い音を降り注がせる。「殺す気でかかってこい!」とNOBUYAが威嚇し、「余力を残すな!」とN∀OKIが吠える。

 会場を大きく縦に揺らした「PLAYBACK」では、客席から沸き起こる歓声の量とボリュームが凄まじい。間奏でN∀OKIが放った「鳴り止まない音がある/拡がり続ける音がある/琴線震わせる音がある」というリリックが胸に刺さる。何が起こるかわからない、事件性と中毒性が高いライブを目の当たりにして興奮を抑えられない。

 「京都の長岡京市で生まれ育って、野球をやってもダメ。サッカーをやってもダメ。ヤンチャをやっても中途半端」とNOBUYA。更に「でも音楽だけは、バンドだけは死ぬ気でがんばってきました」と言葉を重ね、「だからこそ今日最高の友達が集まってくれたと思います。最高のお前らが集まってくれたと思います。ありがとう」と感謝の気持ちを告げる。このフェスが“ポルノ超特急”という名前だった時からずっとそうだった。ROTTENGRAFFTYはステージで何度も何度も「ありがとう」という言葉を口にする。そんな人間味溢れるメンバーだからこそ、彼らのライブはとてつもなく魅力的だし、何度も何度も観たくなる。

 感慨深げにそんなことを思っていたのもつかの間、NOBUYAが本日二度目の「殺す気でかかってこい!」と吠えて「THIS WORLD」へ。ダイバーが途切れない。NOBUYAが狂気の形相で客の上で歌えば、N∀OKIも客席エリアへ身を投じて金閣は大狂乱。ステージに残された侑威地とHIROSHIは楽しそうな表情で激しく演奏を続け、大狂乱を音で更に加速させていく。

 NOBUYAが他界していった音楽の先輩たちへの感謝の想いを吐露し、20年以上前に坂本龍一に許可をもらったエピソードを話し、これまでほぼライブハウスで披露しなかったけれど今日からは演っていくことにしたという「悪巧み 〜 Merry Christmas Mr.Lawrence」へ。深遠な音像を描き出した同曲の世界観にオーディエンスが没頭する。

 そしてライブは佳境に突入。「STAY REAL」で血液を急速に沸騰させたかのような興奮の渦を作り出し、「D.A.N.C.E.」では会場全体を踊り狂わせる。更にN∀OKIが「観たことない景色を作りたい」と叫び、HIROSHIのカウントからの大合唱が圧巻だったのは本編ラストの「金色グラフティー」。もう充分盛り上がっていると思ったのだが彼らはまだまだ足りなかったのだろう、NOBUYAが「おい! ダイバーの数が少なすぎる!」と超スパルタな叱責を客席に浴びせ、N∀OKIが「わかってるやろ? ここから1秒1秒輝き狂え!」と追い打ちをかける。ここまで来たらステージの上もオーディエンスも、もう止まらない。誰にも止められない。客席エリアにはダイバーが溢れ、その中にはG-FREAK FACTORY Motekiの姿も。全員が全身全霊でライブを楽しみ尽くし、輝き狂った狂騒の末に本編が終了した。

 アンコールは、この場所で聴く度に涙が出るほど楽しい気持ちに包まれる「響く都」、そして最後はすべてのエネルギーを放出させた「秋桜」で大団円。手を繋ぎ、何度も何度も頭を下げて感謝の気持ちを告げ、彼らはステージを去っていった。やっぱりROTTENGRAFFTYのライブは最高で、ポルノ超特急改め響都超特急は最高のフェスだった。

 響都超特急2023の1日目はこれで終点へと到着。明日を楽しみにしてパルスプラザを後にした。

text:山中 毅
photo:Yukihide”JON…”Takimoto  / かわどう / 石井麻木  / 岩渕直人

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