響都超特急2023 DAY2 オフィシャルライブレポート

 ぐっと気温が下がって冷え込んだ京都の街の中で、もっとも熱い1日がここ京都パルスプラザで始まろうとしている。昨日はライブハウス歴戦の猛者たちが集まって凄まじいライブが繰り広げられたが、今日も素晴らしいライブを観ることができるだろう。期待に胸を膨らませて会場に入ると、金閣ステージでイベントMCのやべきょうすけ氏が注意事項の説明を行っていた。

 開演10分前になった頃、主催者であるROTTENGRAFFTYのメンバーがステージに登場。明後日誕生日を迎えるNOBUYA(Vo.)は「最高のプレゼントをみなさんから貰えるように。期待しています」と言い、客席からたくさんの拍手が向けられる。昨日と同じくメンバーとオーディエンスによるコール&レスポンスでいよいよ開演。“響都超特急2023” 2日目が発車となった。

 トップバッターを務めたのはThe BONEZ。ドラムセットの前で4人が拳を合わせて気合一閃、JESSE(Vo./G.)が「京都!」と3回叫び、全員がジャンプして「We are The BONEZ」でテンション高くライブスタート。ダイバーがひっきりなしに打ち上がり、朝から興奮は最大級。コール&レスポンスも抜群だったはずが、JESSEが「全然聴こえねぇな!」と挑発して更にヒートアップし、「New Original」で金閣は爆発的な盛り上がりに突入。無数のサークルピットが生まれては消えていき、「Thread & Needle」では肩車からのダイヴが多発。その勢いのままラストの「SUNTOWN」ではJESSEが客席を指差して「少年! 来い! 来い!」と客席からThe BONEZのTシャツを着た観客(小学6年生)をステージに上げ、2人で肩を組んだまま歌い切って終演。いいものを観ることができた。我々にとって、そしてきっとステージに上った少年にとっても、かけがえのない時間となった。

 客席エリアがパンパンになるほど観客が詰めかけた銀閣ステージに1人で登場した四星球の康雄(シンガー)。昨年の“ポルノ超特急2022”、金閣ステージのトップバッターを飾った彼らは、そのステージで「来年はトリ前をやらせてください!」と言ってして我々を大いに沸かせたのだが、蓋を開けてみると今年は「金閣トリ前」ではなく「銀閣トップバッター」ということで、どうやらかなり憤慨している様子。その文句をROTTENGRAFFTYのメンバーに直談判したところボコボコに殴られたとのことで(という設定で)、ボロボロの姿で残りの3人が登場。銀閣は出番が5分少ないだのSNSの即レポが写真だけだのと不満を口にしつつ、ちょんまげマンとROTTENGRAFFTYのN∀OKIが扮するちょんまげマンの2人でちょんまげオブデスを客席に作り出したり、全員で生まれたての仔馬を応援したり、ダイバーが続発した勢いのままステージに上った観客がギターを持ったり、「四星球はジェネリックじゃないんです! 本物なんです!」と叫んだりと、文字にすると本当によくわからない破天荒なライブを繰り広げつつ、「金でも銀でもどっちでもええ! ギラギラしに来ました!」「またしんどかったらライブハウスに遊びに来て!」と実はとても愛が溢れるステージでたくさんの笑顔を作り出した。

 金閣ステージにFear, and Loathing in Las Vegasが登場し、観客がひしめく金閣の温度が更にぐっと上がる。無数の拳が突き上げられる中、「Get Back the Hope」で幕を開けた彼らは、Tomonori(Dr.)が繰り出す強固なリズムに乗ってフロント4人が激しく暴れまくる渾身のライブで魅了する。Minami(Scream Vo./Key./Prog./Rap.)が客席エリアに突入して歓喜の渦を作り上げた「Crossover」、急激に変化していくダイナミックなステージングで観る者の感情を揺さぶりまくった「Keep the Heat and Fire Yourself Up」と曲を重ね、会場の前から後ろまで隙間なくびっしりとハイテンションで埋め尽くす。その状況に満足することなく、So(Clean Vo./Scream Vo./Prog.)が「もっともっと声を聴かせてくれ!」と叫び、最後は「Twilight」で無数のヘッドバンキングとサークルピットを誘発させ、客席をカオス状態に落とし込んで終演。1秒も休むことなく全力で駆け抜けた。

 痛快でハッピーなロック&パンクサウンドを銀閣に鳴り響かせたTENDOUJI。モリタナオヒコ(Vo./G.)とアサノケンジ(Vo./G.)の2人のヴォーカルがそれぞれ作り出す世界観のコントラストと、聴く者を自然に巻き込んでいく強い力を持った楽曲に、オーディエンスは腕を振り上げてノリノリ。ライブを観て「かっこいい」と言ってすぐにツアーに誘ってくれたというROTTENGRAFFTYに対し、アサノが感謝の気持ちを告げる。時には男くさいロックを炸裂させ、特には畳み掛けるようなリリックを重ねて圧倒する。そのキレキレのライブは銀閣を多幸感で包み込み、集まったキッズたちを大満足させた。

 まるで巨大な壁のごとく、ステージ前に無数の肩車が出来上がる。彼らを心待ちにし、溢れ出る高ぶりを抑えきれなくなったオーディエンスがひしめき合った状態でライブをスタートさせたcoldrain。「久しぶりだな、京都!」と言ったMasato(Vo.)は、「このお馴染みのメンツ。テッペン獲りにいくしかないっしょ!」と不敵に笑い、「FINAL DESTINATION」「F.T.T.T」「ADRENALINE」と貫通力の高いライブチューンを連射。無数のサークルピットとモッシュ、ダイヴが何度も何度も繰り返され、もはや会場の興奮は制御不能。「夏も冬もこの街は騒がしい」「でもお前らも俺らも幸せだな」と笑うMasatoの言葉に、客席から大きな歓声が沸き起こる。ROTTENGRAFFTYとは18年くらいの付き合いという彼ら。Masatoが「当時はお兄さんだったけど、いつの間にかおじさんになってました。俺たちもおじさんになってました」と笑い、「…いつまで経っても同じ土俵で闘いやがって。かっこいいんだよな」とつぶやくように吐いた言葉に胸がぐっと熱くなる。そしてライブのマストアンセム「NO ESCAPE」で熱狂の渦に叩き込み、最後は大きな大きなサークルピットを作り出した「NEW DAWN」で終了。

 3ピースから繰り出す骨太なロックサウンドと琴線に触れるエモーショナルなメロディ、アマダシンスケ(Vo./Ba.)とカマタリョウガ(G./Cho.)の絶妙なハーモニーで銀閣の観客を夢中にさせたFOMARE。アマダが「大好きな先輩の背中にリスペクトを込めて。音楽とライブハウスが大好きな人たちへ」と言って始めた「愛する人」が胸に深く深く突き刺さる。観客と一緒に歌ってライブを作り上げ、ダイバーを多発させた激しいステージに大興奮。「超特急のみなさん、またライブハウスに来てください」と想いを告げ、ラストの「Continue」まで全力で駆け抜けた。

 そしてDragon Ashが金閣ステージに登場。まるでコロナが明けた今年に符号したような、“さあ逆襲の時だ ほら/その声を聴かせて”という「Entertain」の歌詞がとてつもなく胸に染みる。Kj(Vo./G.)が「君には君の踊り方がある。それぞれの踊り方で行こうぜ」と言って美しい世界を描き出した「New Era」。曲が進むにつれてダイバーの数が多くなり、手拍子が強くなり、掛け声が大きくなっていった「百合の咲く場所で」。Kjが客席の所々を指差しながら「HEY-SMITHのTシャツ、The BONEZのTシャツ、Dragon AshのTシャツ、ROTTENGRAFFTYのTシャツ、SiMのTシャツ…みんなかっこいいTシャツだよね。こんなかっこいい仲間が、こんなかっこいいイベントやってくれるんだよ。そりゃあ音楽やめられないでしょ」と言い、「ROTTENGRAFFTYに応えてくれ! 松原に応えてくれ!」と叫んで爆発的な歓声が沸き起こる。The BONEZのJESSEが参加した「Fantasista」で熱狂が更に強くなり、最後はROTTENGRAFFTYのNOBUYAとN∀OKIも参加し、Kj自身の言葉で歌ったカヴァー「マンダーラ」で締め括る。音楽とバンドへの愛が溢れたステージに、何度も何度も胸が熱くなった。

 ロックバンドが並ぶ中、マイク1本で銀閣のステージに立ち、オーディエンスの心を撃ち抜いたANARCHY。「ロックがこういうすごいシーンを作っていることに感謝もしているし、リスペクトもしています」と言い、「引きずり込んでやる」とギラリと眼を輝かせ、まるで弾丸のような強度のリリックを重ねていく。The BONEZのJESSEが参加した「奇跡」、そしてROTTENGRAFFTYのN∀OKIが参加した「Sky Limit」で観客は大興奮。最後は「Fate」でオーディエンスを存分に熱狂させてステージを去った。

 「Endless Sorrow」でライブをスタートしたHEY-SMITH。彼らがステージから放つ音楽に乗って、競う合うように暴れるオーディエンス。ステージの6人と客席の呼吸はぴったりと合っていて、全員でライブを作り上げていく。人の上を泳いでいく無数のダイバー、まるで泡のごとく生まれては消えていくサークル、数えきれないほど振り上げられた拳、ステージに惜しみなく贈られる拍手と手拍子。ライブ開始早々に「MCは無し」と宣言したものの、「俺は学生の頃からチケットを買ってROTTENGRAFFTYのライブを観に行っていたファンです」と猪狩秀平(G./Vo.)。「KAZUOMIくんが表から居なくなって、正直大丈夫かなと思っていました」と告白し、「でもサポートにMASAHIKOを迎えて、あんな難しいギター弾けるわけないやろバカ! って思ってたのに…弾けてるよな(笑)。それで活動を重ねてきて、それが今年の“響都超特急”に繋がって。この後ROTTENGRAFFTYのライブ観れるんよな」と感慨深げに言う。更に「心の底からリスペクトしてます。また来年の“響都超特急”で会えると信じてるわ」「生きている者同士、今を大切にして来年に繋げていこう」と力強く言い、最後に「Goodbye To Say Hello」でもう一度客席を大いに熱狂させてライブを終えた。

 有機的なアンサンブルと体温を感じさせる歌でオーディエンスを夢中にさせたOAU。「Pilgrimage〜聖地巡礼〜」ではN∀OKIが途中から参加したスペシャルコラボで魅せる。「Peach Melba」の美しい旋律と極上のグルーヴを堪能させ、MARTIN(Vo./Violin/AG.)がヴォーカルの「Time’s a River」「Making Time 」で会場の温度をぐっと上げる。そして最後はTOSHI-LOW(Vo./AG.)が「愛する人のために、大事な人のために。また会えるように」と「帰り道」。最高の音楽を味わい尽くした贅沢なひと時だった。

 SiMの1曲目「Blah Blah Blah」からオーディエンスのテンションは全開。大合唱したかと思えば、笑顔で宙に舞うダイバーたち。“響都超特急2023”もイベント終盤に差し掛かり、観客たちは残る体力をすべて使い切ろうと全力でライブに没頭する。SiMの個性が炸裂した伝家の宝刀「TxHxC」で陶酔させ、新曲「KiSS OF DEATH」で会場をひとつにする。この2日間複数の出演者がステージで口にしたことだが、音楽シーンの先輩たちの訃報に触れ、「生きているうちに好きなバンドのライブを1回でも多く観に行ってください」とMAH(Vo.)が言い、「DO THE DANCE」「PANDORA」と曲を重ね、「KiLLiNG ME」で怒涛の狂騒を作り出し、「f.a.i.t.h」で興奮を沸点に到達させて終演。カリスマを爆発させ、まるでモーゼの如くオーディエンスをぐいぐいと引っ張っていく見事なステージだった。

 疾走感のある爽快なステージで銀閣にダイバーを多発させたTOTALFAT。観客の心をガッチリと掴んで離さないタフな彼らのステージングは、ライブハウスで培ってきた本物の強さが伺える。客席を笑顔で埋め尽くした「晴天」、畳み掛けるリリックと分厚いアンサンブルで会場をぎゅっとひとつにした「Fire Works」。「コロナの間、ずっと苦しい想いをしてきたけれど、今日がご褒美だね」とShun(Vo./Ba.)が笑顔で言い、「Place to Try」の突き抜けるようなメロディとビートでたくさんの笑顔を作り出しつつ、みんなで大合唱してライブを終えた。

 山中拓也(Vo./G.)が何度も観客の勢いと熱量を褒め称えたシーンが印象的だったTHE ORAL CIGARETTES。「Red Criminal」でオーディエンスを存分に暴れさせ、立て続けに「Mr.ファントム」で追い打ちをかける。「先輩たちがとんでもなく熱いバトンを繋いできたので、俺らもめちゃめちゃ熱いバトンを繋いでいこうと思います」と宣言し、「カンタンナコト」では山中が客席エリアに身を投じてオーディエンスの熱狂にガソリンを注ぎ込む。「曲の半分を客席で歌ったの、俺初めてちゃうかな。支えてくれてありがとう」と山中が告げ、最後はキラーアンセム「mist…」へ。観客が大合唱した景色を目にして思わず「今年イチの景色かも知れません」と笑う山中。その言葉通りめちゃくちゃ熱いバトンを繋ぎ、「ROTTENGRAFFTY、最後よろしくおねがいします!」と言ってステージを後にした。

 笑いを交えつつ、究極のハイトーンボイスとキレキレのメタルサウンドでROTTENGRAFFTYに熱い想いを繋いだTHE冠。昔サークルピットに憧れて歌いながら頭上で腕をまわしたところ、当時のTHE冠の観客にその文化が根づいていなかったのか、ステージの冠徹弥と同じように観客たちも頭上でくるくると腕をまわしたというエピソードを説明し、「なので次の曲は僕と同じように腕をまわしてください。サークルピットは要りません」と言って始めた「糞野郎」で客席にサークルピットが発生。「オイ! 約束が違う!」と叫ぶ冠に大歓声。続く「おっさん」では途中からROTTENGRAFFTYの「響く都」へと繋ぎ、魂を振り絞って「初志冠徹」で終演。彼の生き様をまざまざと見せつけた、楽しくてかっこいい漢のライブだった。

 “響都超特急2023”もいよいよ終着駅が近くなってきた。大トリ・ROTTENGRAFFTYが金閣に登場して大歓声が沸き起こる。その幕開けはライブキッズ垂涎の「金色グラフティー」。同曲を1曲目に選んだことからも、彼らの気合いの強さが伺い知れる。NOBUYAが「かかってこい!」と吠え、えぐい数のダイバーが打ち上がってはステージ方向へと流れていく壮観な景色。客席エリアを埋めつくした観客がひとつの塊のようになって大きくうねる。テンションの階段を3段飛ばしくらいのスピードで駆け上がっていく観客と、それでも足りないと攻め立てるROTTENGRAFFTY。全員がすごすぎて、もう笑うしかない。

 N∀OKIが「歌ってくれ! 踊ってくれ! 好きなようにやってくれ!」と無礼講を発動した「秋桜」ではダイバーが大渋滞。そんな沸騰状態に突きつけた次の曲は「D.A.N.C.E.」。もう誰にも邪魔ができない。ライブに没頭して暴れ狂うオーディエンスと、その様子を見てニコニコと笑みを浮かべながらドラムを叩くHIROSHI(Dr.)。

 「KAZUOMIがサウンドプロデュースにまわって、サポートギターにMASAHIKOが来てくれました。その時、意地でもROTTENGRAFFTYを辞めないでおこうと思いました」と当時の想いを口にするNOBUYA。「でも今年、ROTTENGRAFFTYのチームの中でいろんなことがあって、初めてROTTENGRAFFTYを辞めようかなと思いました。でもライブをガンガンやって、一緒に演ってくれる仲間たちや、ライブに来てくれるおまえらが居てくれて…やっぱりがんばろうと思いました。その感謝の気持ちを込めて」と言った後、「おまえら全員ぶち殺す!」と牙を剥いて「THIS WORLD」へ突入し、NOBUYAとN∀OKIが客席に突入し、侑威地(Ba.)とMASAHIKOが向き合い、HIROSHIと共にアンサンブルを組み上げる。エモーショナルなことを言って感動させるかと思ったら、次の瞬間にはまた狂乱の渦に落とし込む。我らがROTTENGRAFFTYはやっぱり最高だ。

 そして今度はN∀OKIが感謝の言葉を口にしつつ、サポートギターとして1年半活動を続けてきたMASAHIKOが今日で卒業すること、そして今の瞬間から正式メンバーになったことを発表し、ステージ上の5人に大きな大きな拍手が贈られる。まるで自分のことのように嬉しいニュースに思わず涙しつつ、続くNOBUYAの「5人が6人になりました。7人目のメンバーはおまえらです」という言葉に更に胸を熱くする。そして鳴らされたのは、苦しかった時期のバンドを支えた楽曲「マンダーラ」。N∀OKIがリリックを変え、今の想いを紡いだ同曲が強く強く突き刺さる。

 多幸感に包まれたパルスプラザは、大成功という名の終点へと一直線で突き進む。真っ直ぐな歌と壮大なスケールが強烈なインパクトを残した新曲「Blowin the reborn」、ヒリヒリとした緊張感の中で魂を削るような「零戦SOUNDSYSTEM」と重ね、残った気力と体力を振り絞って「ハレルヤ」で大暴れし、NOBUYAの「俺たちがここ京都で生まれ育ったROTTENGRAFFTYだ!」という切り口上で本編が終了。アンコールでは「響く都」で上へ下へのお祭り騒ぎをした後、最後はN∀OKIが「俺たちの始まりの歌」と言った「切り札」。客席後方まで照明に照らされた中、みんなの笑顔で会場が埋め尽くされて大団円。「また来年、必ずよろしくお願いします」とN∀OKIが叫び、5人揃って何度も何度もステージで頭を下げ、楽しかった2日間の幕を閉じた。

 「ライブがいい」というたったひとつの共通点を軸に、ROTTENGRAFFTYが様々なジャンルの猛者たちを集めて開催された“響都超特急2023”はこれで終着駅に到着。コロナが明け、お笑いのステージも戻り、様々な規制が取り払われて本来の形を取り戻した冬の響都の風物詩。凄まじく気合いが入った出演者たちのライブ、そして負けず劣らず気合いが入った観客たちの熱狂を観ることができて本当によかった。みなさん、良いお年を。

text:山中 毅
photo:Yukihide”JON…”Takimoto  / かわどう / 石井麻木  / 岩渕直人

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