響都超特急2024 DAY1 オフィシャルライブレポート
音楽ファンにとって冬の風物詩となったフェス“響都超特急”。この日が来ると冬の訪れを実感し、そして1年の終わりを感じるようになったのはみんな同じはず。寒風吹きすさぶ12/21(土)、京都パルスプラザは朝早くからたくさんの人がごった返していた。京都の雄・ROTTENGRAFFTYが主催するイベントだけあって、今年のラインナップも2日間びっしりと歴戦の猛者揃い。更にライブとライブの間にはお笑いの猛者たちも並び、観客たちの期待も相当高いだろう。
イベントMCであるやべきょうすけ氏が注意事項を説明するために金閣ステージに登場し、外の寒さに影響されることなく会場の温度はどんどん上昇していく。挨拶のためにステージに登場したROTTENGRAFFTYの5人は心身ともに充実した表情で気合満点。恒例となった「出発!」「進行!」という観客との掛け合いで待ちに待った“響都超特急2024”が発車した。
金閣ステージのトップバッターを飾ったのは氣志團。叶 亜樹良(サポートDr.)がドラムを叩く中、綾小路 翔(Vo.)が改造バイクにまたがって登場。観客たちが度肝を抜かれる中、バイクのエンジン音とドラムが織りなす強烈なアンサンブルに心を奪われる。程なくメンバーが揃い、「俺達には土曜日しかない」でライブスタート。THE ORAL CIGARETTESのピンチヒッターとして出演が決まったという彼らは、自らのキラーアンセム「One Night Carnival」で熱狂させた後、THE ORAL CIGARETTESの「狂乱 Hey Kids!!」をオマージュしたリアレンジVer.の「One Night Carnival」を披露し、会場が驚きと歓喜の声で埋め尽くされる。更に「ROTTENGRAFFTYに響け!」と「金色グラフティー」をオマージュしたリアレンジVer.の「One Night Carnival」と続け、大興奮した客席エリアではダイバーが続出。バンド同士の深い繋がりと愛に溢れ、人間味に溢れたステージはとんでもなくかっこよかった。
銀閣ステージのトップを飾ったDizzy Sunfistが、初っ端から客席エリアをダイバーで埋め尽くす。 あやぺた(Vo./G.)は「いつでも味方で居てくれるウチらのスーパースター。輝かせてくれる場所を作ってくれてありがとう!」とROTTENGRAFFTYに感謝の気持ちを叫び、「お前らもっと来いや!」と煽る。ライブキッズの心に火を点けたエネルギッシュなステージを繰り広げ、「SHOOTING STAR」で銀閣を興奮の渦に落とし込んだ。
金閣にいきなり無数のサークルピットを生み出して会場を揺らしたCrossfaith。7年ぶりの出演という彼らは、ROTTENGRAFFTYの25周年と7年ぶりの出演を祝してKoie(Vo.)がビールで乾杯し、興奮が頂点に達したオーディエンスは「Wildfire」で狂乱のお祭り騒ぎ。その勢いのまま「Countdown To Hell」では2度のウォール・オブ・デスを炸裂させ、ラストはヘヴィサウンドが雨のように降り注ぐ「God Speed」でオーディエンスを狂喜乱舞させる。彼らは桁外れの熱量で見事に走り抜けた。
骨太なサウンドを銀閣に鳴り響かせたのはSIX LOUNGE。極上のビートにオーディエンスは気持ちよく身体を揺らし、3ピースで組み上げた極上のロックンロールに酔いしれる。曲を重ねるに従って3人はぐんぐんと勢いを増し、比例するようにオーディエンスもヒートアップ。観客1人1人が突き上げた拳とダイバーが客席に溢れる中、ヤマグチユウモリ(G./Vo.)が「ROTTENGRAFFTY愛してます!」と「メリールー」を感情豊かに披露。硬質なサウンドと強靭なアンサンブル、貫通力の高い歌で観客を存分に魅了した。
「君にしか」で幕を開け、強烈な輝きを放ったハルカミライ。橋本 学(Vo.)は「かかってきなさい」と不敵な笑みを浮かべ、生命力溢れる楽曲を重ねてオーディエンスの心を鷲掴みにしていく。アコギを持った橋本が「満・地球の出」の一節を歌い、「時間を一緒に過ごせば過ごすほど、あの人たちの曲が好きになる。つまり音楽は人で出来ている」と放った言葉の説得力。金閣のダイバーを一切途切れさせることなく、百戦錬磨のライブフリークたちの熱を上げ続けていくバンドの吸引力。人間力とバンドのポテンシャルを存分に見せつけ、最後は予定に無かったがROTTENGRAFFTYのNOBUYAが好きだからという理由で「冬のマーチ」。4人は清々しい笑顔を残してステージを後にした。
“ポルノ超特急”時代から数えて14年ぶりに出演を果たしたGELUGUGUは、「いきなり曲演るのなんか恥ずかしいわ」とGen(Vo.)とPARA(Ba.)がしゃべり始め、まるで漫才のような掛け合いで会場が爆笑に包まれる。満を持してスタートしたライブがこれまた最高で、スカパンクの小気味よいサウンドに気分を高揚させたオーディエンスがフロアで踊り狂う。ROTTENGRAFFTYの「金色グラフティー」をスカパンクアレンジで披露して歓喜させ、最後は大阪にあったライブハウスへの想いをスカパンクに乗せた「BAYSIDE JENNY」。観る者の心をぐっと掴んで離さない見事なライブだった。
「Emotions」の大合唱で巨大な一体感を作り出したMAN WITH A MISSION。Jean-Ken Johnny(G./Vo./Rap)が「カカッテコンカイ京都!」と叫び、客席から大きな歓声が返される。心憎いほどにライブキッズの琴線に触れまくる「When My Devil Rises」「Raise your flag」と重ねるオオカミたちは、我々を楽しませる術を知り尽くしており、会場がびっしり隙間なく笑顔で埋め尽くされる。客席ではサークルが生まれては潰れ、次から次へとダイバーが打ち上がっては前方に流れていく。ラストの「FLY AGAIN」ではDJ Santa Monica(DJ/Sampling)が客席に飛び込み、観客全員が手を振り上げ、身体を揺らして叫び、飛び跳ねて歌うという壮観な景色を作り出して終了。ライブ中盤でJean-Ken Johnnyは「狂ッタ京都ノオ祭リニ呼ンデモラッテアリガトウゴザイマス」と言っていたが、まさにこの時間帯の金閣は、狂った京都のお祭り状態と化していた。
ジャンルの垣根を超えたアーティストが出演するというのも“響都超特急”の魅力の1つ。この日銀閣に出演したラッパー・Jin Doggは、切れ味鋭いラップと一瞬で熱狂を作り出す爆発力のあるステージングでフロアを熱くする。「ベルセルク」「PRADA」と殺傷力の高い楽曲を続け、興奮が渦巻くフロアにサークルピットやモッシュが沸き起こる。リアルな肌触りのリリックが印象的な「街風」を経て、最後は客席に降りて「team tomodachi」でライブ終了。心臓を鷲掴みにされたような、強烈なライブの体験だった。
一瞬たりとも観客のテンションを下げることなく、うなぎのぼりの右肩上がりで勢いを増していったヤバイTシャツ屋さん。「Blooming the Tank-top」「Tank-top of the world」とタンクトップ2連発でオーディエンスのテンションを限界までブチ上げ、超絶興奮状態の金閣に「D.A.N.C.E.」(ROTTENGRAFFTYのカヴァー)を投入。3人は火に油を注ぐかのようにキラーチューンを連発し、息をつく暇を与えない。眼光鋭く客席を見たこやまたくや(Vo./G.)は、「ROTTENGRAFFTY大好き! 呼んでくれてありがとうございます!」と感謝しつつ、「こんなんじゃあ足りないんですよ。ROTTENGRAFFTYに“ダイバーが少ない”と言わせるために、ヤバTの方がダイバーが多い状況を作りたいんです」と煽り、「ヤバみ」で思う存分に暴れさせ、時間が少し余ったのだろう、「おまけ」と言って「Universal Serial Bus」を追加して最後まで全力疾走で駆け抜けた。
ぎゅうぎゅうに観客が詰めかけた銀閣にいきなりダイバーを乱発させたENTHは、この日の出演者の中で最も自分たち自身のライブを楽しんだ1組だったのかもしれない。命を燃やすように「ムーンレイカー」をかき鳴らし、ハイスピードなリズムと流れるようなメロディの「BLESS」で何度もジャンプさせ、「思いっきり遊んでいきましょう」と「SCUM DOGS FART」で踊らせる。そして「Get Started Together」「Will」という一体感を作り出すパワフルなチューンで終演。ダイバーがひっきりなしに宙を舞い、観客の笑顔に満ちた空間だった。
大歓声で金閣に迎えられたマキシマム ザ ホルモンは、盟友・ROTTENGRAFFTYの25周年と“響都超特急2024”を祝福すべく、初っ端から凄まじい音圧とキレキレのステージングで攻めに攻める。強靭なアンサンブルの「ハングリー・プライド」でフロアを沸騰させ、ナヲ(ドラムと女声と姉)による名乗り口上を経て「鬱くしき人々のうた」をみんなで大合唱。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)がステージを縦横無尽に駆け回り、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)が鬼の形相で気焔を吐き、上ちゃん(4弦と歌とDANGER×FUTOSHI)がペットボトルで弦を弾いて躍動し、仏の如きナヲのリズムがすべてを包み込む。ROTTENGRAFFTYとは2003年の九州ツアーからの付き合いだという彼ら。MCで懐かしそうに当時を振り返っていたダイスケはんだったが、突如銃声がして凶弾に倒れ、ピストルを持った犯人がステージに現れる…というミニコントで登場したのはなんと生田斗真。そのまま「殺意vs殺意(共犯:生田斗真)」というスペシャルなコラボが実現。そのまま生田のガイドで“恋のおまじない”を全員で行い、ラストの「恋のメガラバ」まで共に駆け抜けた。ただでさえ破壊力のある彼らのライブが、スペシャルゲストによって厚みと奥行きを増し、歓喜したオーディエンスは上へ下への大騒ぎ。拳を突き上げ、頭を振り、身体を揺らし、ステージ上の5人と一緒に歌いながら多幸感に溢れる時間を心ゆくまで堪能した。
「ENTHからのスサシ。この世代のこの流れ、ありがとうございます!」というタナカユーキ(Vo./G.)の言葉で始まったSPARK!!SOUND!!SHOW!!。「JUNGLE BUN DEM」でライブをスタートし、「YELLOW」「黒天使」と中毒性の高い楽曲で狂乱と興奮の渦をどんどん大きくしていく。客席エリアに身を投じて「南無」を演り切ったタナカは「こんなMCはあまりしないけど…」と言ってから「我々スサシ、いつでも金閣に出る準備出来てますんで、これからもよろしくお願いします!」と頼もしい言葉を口にする。そしてROTTENGRAFFTYのN∀OKIがゲスト参加した「HAPPY BIRTH DIE」で熱狂させ、最後は「感電」でフロント3人が客席に突入。規格外なセンスとパフォーマンス、そして熱い想いが同居した、素晴らしいライブだった。
ダイバー、サークルピット、モッシュにジャンプに大合唱。04 Limited Sazabysが金閣ステージに立って音を鳴らした瞬間に観客の興奮はピークへと到達。「fiction」「monolith」「knife」と4人がキラーチューンを重ねるたび、まるでブラックホールのごとく客席のサークルがどんどん人を巻き込んで大きくなっていく。GEN(Ba./Vo.)が「俺たちを誰よりも早く見つけてくれた」とROTTENGRAFFTYへの感謝の気持ちを口にする。高校生のときにはROTTENGRAFFTYのコピバンをやっていたというGENが「25年は伊達じゃないです」と敬意を払い、「Buster call」で会場を熱狂の渦に包み込む。ラストは客席から数え切れないほどの拳が振り上げられた「swim」。リスペクトの想いが溢れる渾身のライブだった。
ROTTENGRAFFTYの25周年を記念して、持ち時間が30分しかないのに25曲のライブに挑戦した四星球。“ポルノ超特急”時代から、このフェスに出演したときの四星球は歯止めが効かないほど全力で突っ走る傾向にあったが(もちろんそれはROTTENGRAFFTYに対する愛情表現に他ならないのだが)、「コンプライアンスを気にして“ポルノ超特急”から“響都超特急”に名前を変更するような日和ったイベントです」と北島康雄(シンガー)が言い放つほどに彼らはギラついていた。いったいどうやって25曲を実現するのかと思ったら、「時間がない時のRIVER」(10-FEET「RIVER」カヴァーのショートアレンジ)を合計12回も演るという驚愕のセットリストで、その中に笑いがあり、バンド愛もあり、一体感ありという、濃密で濃厚で最高に痛快なパフォーマンス。金閣のトリ・ROTTENGRAFFTYへ熱いバトンを繋ぐ、四星球にしか出来ない見事な銀閣トリのライブだった。
“響都超特急2024”の1日目はいよいよ大詰め。この日のトリを飾るのはもちろんROTTENGRAFFTY。金閣のステージにHIROSHI(Dr.)、MASAHIKO(G.)、侑威地(Ba.)が登場して大歓声が向けられる。MASAHIKOがギターを歪ませる中、N∀OKI(Vo.)とNOBUYA(Vo.)が登場。「泣いても笑っても最終列車。明日が普通に来ると思うなよ」とN∀OKIが叫び、狂騒の幕開けは「ハレルヤ」。MASAHIKOが鳴らすギターが襲いかかり、HIROSHIと侑威地が繰り出すリズムが地鳴りのように押し寄せる。N∀OKIとNOBUYAのツインヴォーカルに観客は感情を剥き出しで応戦。狂った京都改め、狂った響都のお祭りが始まった。
客席の後方を指さして「全員や!」とN∀OKIが吠え、目を見開いたNOBUYAが「殺す気でかかってこい!」と吠える。ステージの上と下とで命を削り合っているかのような殺気立ったライブなのに、5人とオーディエンスの呼吸はぴったりと合っていて、「秋桜」で抜群の一体感を作り出す。GELUGUGUのホーン隊が参加した「D.A.N.C.E.」は、奥行きがあるゴージャスなアレンジが素晴らしく、客席からの歓声はどんどん大きくなっていく。視界が狂騒と多幸感で塗りつぶされるという、ROTTENGRAFFTYのライブならではの快感に包まれる。
「今日友達が出たくても出られなかったんよ。俺の大好きな曲だからみんなも歌えるでしょ?」とNOBUYAが始めたのはTHE ORAL CIGARETTESの「5150」。同曲を観客と共に一節歌ってから「THIS WORLD」へ突入。えぐいほどのダイバーがステージ方向へ押し寄せ、ほどなくヴォーカル2人は客席へ。観客に支えられながら熱狂を焚きつけるかの如く、鬼神のように2人が歌い、鼓舞し、煽り、吠える。会場の興奮はもはや手が付けられないほどに高まり、パルスプラザが大きく揺れる。
「THIS WORLD」を終え、N∀OKIがステージに戻り(NOBUYAは客の上で「お前らは同じバンド・音楽が好きな仲間やろ! 助け合え! 倒れてるやつがいたら起こしてやれ!」と叱責してからステージに帰還)、「ROTTENGRAFFTY25年やってますねん」と言えば、侑威地がマイクを通さずに「ありがとう」と客席に向かって頭を下げる。「このメンバーでないとここにたどり着けなかった。ここに甘んじることなく、俺らは突き進む。変わり続ける。その先へ。まだ見たことのない景色へ」とN∀OKIが言葉を重ねて「Blown in the Reborn」へ。ステージ左右の大型ビジョンに歌詞が映し出された同曲は、25周年ツアーのタイトルにもなっており、今後のバンドの意志と指針が示された楽曲。キャリアを重ねてもなお初心を持ち続け、成長しようとするその姿勢がとても頼もしくて誇らしい。
そして勢いを止めることなく「STAY REAL」「銀色スターリー」と力を振り絞ってライブアンセムを連射。「朝からほぼ休むことなく…お前らがいちばんすごい!」とN∀OKIが観客を称え、渾身の「金色グラフティー」へ。NOBUYAが「ヤバTよりダイヴの数が少ないやろボケコラ!」とキレ気味に叫び、N∀OKIが「見たことのない自分にたどり着け! 輝き狂え!」と吠える。会場は沸騰したかのような盛り上がりを見せ、曲が終わるまでダイバーの波が途切れない壮絶な状態。NOBUYAが「俺たちが京都で生まれたROTTENGRAFFTYだ!」と叫んで本編終了。まさに全身全霊、「手を抜く」「力を加減する」という言葉が辞書に無い、ROTTENGRAFFTYにしか出来ないライブだった。
NOBUYAの「俺ら辞める時期を見失ってるんで死ぬまでROTTENGRAFFTYやります」という言葉に大きな歓声が沸き起こったアンコールでは、鋭い切れ味の「暁アイデンティティ」で再び熱狂を作り出し、“響都超特急”ならではの「悪巧み~Merry Christmas Mr.Lawrence」で魅了した後、N∀OKIの「ここでこれ演らんと帰れんわ」という言葉に激しく同意した「響く都」で大団円。
出演者全員がフルスピードで走り抜けた“響都超特急2024” 1日目。狂った京都のお祭りは、やっぱり今年も格別だった。今日に負けず劣らず明日も歴戦の猛者ばかりで、明日はいったいどのような1日になるのだろうか。明日を楽しみにしつつ、余韻に浸りながらパルスプラザを後にした。
TEXT:Takeshi.Yamanaka